中国系ハッカー、エージェント型AIを悪用し2,250のMicrosoft 365テナントを攻撃

Microsoftによると、Storm-0940はオープンソースのAIフレームワークと、ConnectWiseへの侵害で盗んだ認証情報を悪用し、クラウドへの侵入をマシンスピードで自動化したといいます。

中国政府と連携する脅威アクターがConnectWiseのクラウドバックアップアプリケーションを侵害し、オープンソースのエージェント型AIフレームワークを使って、盗んだ認証情報を2,250以上のMicrosoft 365テナントへの攻撃に転用したと、Microsoftが明らかにしました。

Microsoft Threat Intelligenceはこの活動をStorm-0940によるものと断定しました。同グループは早ければ2026年9月からARTEXフレームワークを使い、数百の組織に対する攻撃を自動化してきたとしています。標的にしてから3時間足らずで、特権的なクラウドアクセスを獲得したケースもありました。Microsoftは、今回の活動が自社のシステム、製品、サービスへの侵害や脆弱性に起因するものではないと説明しています。

Microsoftはブログ記事で、「この活動は、脅威アクターが既存の攻撃的セキュリティのワークフローにエージェント型AIを組み込み、攻撃の規模を飛躍的に拡大している実態を示しています」と述べています。

マシンスピードのサインイン

同記事によると、ConnectWiseへの侵害後、Storm-0940はARTEXを使って2,250以上のテナントに対し、毎分2,900回のペースでサインインを試みました。ConnectWiseは10月16日、同社のCloud Backup製品に関連する不正アクセス未遂について最初のアドバイザリーを公表しました。その後、封じ込めに関するガイダンスを拡充しています。

攻撃者は、複数のConnectWiseクラウドアプリケーションのIDを使い、すでにアクセス権を付与されていたアプリ経由でMicrosoft 365環境に認証しました。これにより、ユーザーによる対話型のサインインは不要になったと、同記事は指摘しています。

一部の環境では、エージェントがMicrosoft Graphやディレクトリ操作へと侵入を進めました。具体的には、偵察活動のほか、永続化のためのアプリケーション認証情報の変更、ID、グループ、特権ロールの変更などです。Microsoftは、こうした変更は元のアプリケーションを修復した後も「バックドアとして残り続ける可能性がある」と警告しています。

ConnectWiseにコメントを求めましたが、現時点で回答はありません。

IDCアジア太平洋地域でセキュリティサービス担当シニアリサーチマネージャーを務めるYih Khai Wong氏は、このスピードは人間の対応能力を超えていると述べています。

Wong氏は「毎分2,900回のサインイン試行と、3時間足らずでの特権的クラウドアクセスの獲得は、どれほど人員を厚くしたSOCであっても、人間のアナリストのキューでは追いつけない速さです」と語りました。

同氏によると、認証情報の無効化、トークンの失効、サービスプリンシパルの隔離といった封じ込め措置は、あらかじめ定めたしきい値で自動的に実行し、人間は事後に確認する形にすべきだといいます。マシンスピードの攻撃に対しては、「人間が『承認』をクリックするのを待つやり方では通用しません」と付け加えました。

信頼されたアプリ、信頼できないアクセス

Security Brigadeの創業者兼CTOであるYash Kadakia氏は、今回の事案は企業のアクセス保護のあり方に潜む穴を浮き彫りにしたと指摘します。

Kadakia氏は「企業は従業員のログインをMFAや条件付きアクセスで守ることに多大な時間を費やしていますが、サードパーティのアプリケーションも同等に強力な権限を持ち、従業員が介在しなくても認証できます」と述べました。さらに、「私たちは長年、人間に対するゼロトラストを導入してきた一方で、マシンのことは暗黙のうちに信頼し続けてきました」と語っています。

同氏は、ベンダーとの連携は特権アカウントと同じ扱いにすべきだと説明します。具体的には、権限を最小限に絞り、継続的に監視し、定期的にアクセスを見直し、アクセスを確実に取り消せる手段を用意しておくことです。

Kadakia氏は「1年前に使うのをやめたアプリケーションが、今もご自身の環境で権限を持ち続けているかもしれません」とも述べています。

Wong氏は、責任は双方にあると言います。「侵入口となったConnectWiseには、自社のアプリがテナントをまたいでアクセスできる仕組みを支える認証情報とインフラを守る責任があります」と述べました。一方、顧客側にも、誰にどのようなアクセスをいつまで許可したのかを把握する責任があると付け加えています。

ARTEXは、中国発のオープンソースのマルチエージェント型LLMシステムで、あらゆるAIモデルを利用できます。エージェントは、偵察からデータ窃取まで一連のペネトレーションテストを、人間の関与をほとんど必要とせずに実行します。Microsoftによると、10月の公開報告でこのフレームワークが韓国の金融機関で起きたデータ侵害と関連づけられており、複数の地域のアクターが使用しているといいます。

Microsoftによれば、Storm-0940は2021年から活動しています。ARTEXを使った攻撃の標的は、航空宇宙・防衛、エネルギー、金融サービス、政府、半導体・テクノロジーなど、多岐にわたります。同社は、標的とした攻撃の大半は失敗に終わったものの、同グループは多くの組織で短期間のうちに特権的なクラウドへの永続的なアクセスを確保したと説明しています。

Wong氏は「攻撃はコモディティ化しています。脅威アクターはオープンソースのツールで攻撃を仕掛けるケースを増やしています。かつては潤沢な資金を持つ集団だけが持ち得た高度な攻撃能力を、GitHubのリポジトリをLLM APIに対して実行できる人なら誰でも手にできる時代になりました」と述べています。

Kadakia氏は、個々のリクエストを調べても、AIエージェントと人間のオペレーターを確実に見分ける方法はないと語ります。盗まれた認証情報による正規のAPI呼び出しは、誰が実行したかにかかわらず同じに見えるためです。

同氏は「防御側は、人間とAIのどちらが操作しているかではなく、そのIDが何をしているかに注目すべきです」と話しています。

ConnectWiseとの接続を無効化

Microsoftは顧客に対し、ConnectWiseが復旧手順を示すまでは、影響を受けたConnectWiseとの接続を無効のままにしておくよう助言しています。また、最初の対応としてエンタープライズアプリケーションを削除しないよう求めました。組織は、表示名ではなく、影響を受けた4つのアプリケーションIDでテナントを検索し、Entra、Purview、SIEMの記録を保全すべきだとしています。さらに、少なくとも10月15日以降のアクティビティを確認し、記録が残っていれば10月1日までさかのぼって調べるよう促しました。

同社は、影響を受けるアプリケーションが存在しただけで侵害が起きたと決めつけることにも注意を促しています。Microsoftは同記事で、「影響を受けるアプリケーションが存在すること、あるいは認証が成功したことだけでは、必ずしも不正なデータアクセスやデータ窃取があったとは限りません」と述べています。

翻訳元: https://www.csoonline.com/article/4239028/china-linked-hackers-used-agentic-ai-in-attack-on-2250-microsoft-365-tenants.html

本記事は csoonline.com の記事を翻訳・要約したものです。